通常、牝犬の所有者である繁殖者は、所有する基礎牝犬の血統を考察して、配合相手の 牡犬を決めるわけですが、この場合、直子に最良のものを求めるのか、あるいは孫に求め るのか、あるいは曾孫に求めるのか、それによって配合相手もおのずから異なるわけです。 いわゆる計画繁殖は、直子の最良のものを求めるだけではなく、その犬種の将来をもみき わめるような、何世代か先を考えて配合相手を決定することも、重要なことでしょう。 繁殖する場合の配合相手犬の牡犬の決定は、従って非常に重要な意味を持つわけです。 牡犬の賞暦にのみまどわされることなく、所有牝犬の長所短所ををお互いに補償しあえるべ きものを選択し、配合相手犬を決める必要がありましょう。 繁殖に際しての配合相手の牡犬を決めるとき、優良形質の遺伝は父の血統と母の血統 にそれぞれ存在する同一の優秀な祖先によって行われることが多いことを、知るべきであ ります。ですから、父と母から受け継がれる遺伝特質を引き出し、優良形質を決定するた めの最も重要な要素が、配合そのものといえるわけです。 従って、配合をみきわめるためにも、所有する牝犬と共に、主要な牡犬の血統を承知し ておくべきで、ある程度血統を調査し、血統を身近なものにしておくべきでしょう。そして、 この配合を考えることこそ、繁殖者にとって最大の楽しみであらねばならないと思います。
上記したように、犬の優良形質の遺伝は、父の血統と母の血統にそれぞれ存在する同一 の優良な祖先によって行われます。つまり、インブリードか、ラインブリードによるわけで あり、すなわち、近親繁殖(クロス)によってであります。 しかし、近親繁殖ならどのようなかたちの近親交配でもよいかというと、そうではなく、 あくまでも優良形質を持つ優秀な個体のクロスでなくては意味がなく、もちろんのこと不 良形質をもつものの近親繁殖であれば、その不良形質は固定化されるでしょうし、また 優良形質をもつものの近親繁殖であっても、内在している不良形質が顕在化してくること もあり、それ以上に、近親繁殖による体質の劣化や活力の低下などの弊害が現出すること があります。従って、近親繁殖の活用は、アウトブリードによって活性化された、生活力 旺盛な健康な遺伝子を持った犬がその背景にあって、初めて成立するものであることが、 肝要であることはいうをまたないのであります。
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